ハイイヌツゲ (2011年7月2日)
ちょうど、今の時期は、ハイイヌツゲの花が咲く時期です。同じくモチノキ科のミヤマウメモドキも花をつけています。どちらの花も、とても小さくて目立ちませんが、独特の香りがするので、すぐに花が咲いていると気がつきます。そして、その花にはたくさんのミツバチもやってきます。そういえば、ひるがの高原周辺で採れた蜂蜜からは、ハイイヌツゲやミヤマウメモドキの花の香りがすることがあります。一つ一つの花は小さくても、数はとても多いので重要な蜜源となっているようです。
ハイイヌツゲは、地元では「やどみ」とよばれています。こまかい葉や枝が非常に多く、そこへ「矢」を討っても「止まる」ことから「矢止め」がなまって「やどみ」になったと地元の方が教えてくれました。元々、イヌツゲという植物があるのですが、これは、刈り込みに強いため、庭木としても植えられています。ひるがの高原のものは、冬に雪で地面に押し付けられるためなのか、地面を「這う」ように生えているので、「這いイヌツゲ」です。ハイイヌツゲを雪の少ないところに植えると、地面を這わずに大きくなるのかもしれません。ところで、ツゲという木もありますが、これは、「つげのくし」のように、細工物に使われます。ツゲもイヌツゲも常緑低木で小さな葉を枝にたくさんつけるので良く似ていますが、イヌツゲは材として有用ではないため、名前に「イヌ」がついています。
ハイイヌツゲは、植物園では他の植物を日陰にし、増えすぎるとワタスゲやキンコウカなどの湿原植物にとって良くないので、駆除の対象となっていますが、刈り過ぎても、地面に生えているミズゴケに日が当りすぎて枯れて乾燥してくるのでやっぱり湿原植物にとって良くないようです。また、湿原植物園の周囲には、ハイイヌツゲの低木林が広がっているのですが、ここはオオジシギの子育ての場所となっているようですし、雪解け後にも枝に残っている黒い実はあまりおいしくなさそうですが、この時期は他にえさが少ないのか鳥たちがついばんでいます。また、先に述べたようにミツバチにとっても必要な植物だといえます。なんでも私たち人間の都合で役に立たないから切ってしまえというのはどうかと思います。
2011年7月2日 2:46 PM