トウゴクミツバツツジとユキグニミツバツツジ
以前から、夫婦滝周辺のミツバツツジの種類を調べています。ミツバツツジの仲間は、ツツジ属の中でも特に分類が難しく、なかなか種類がはっきりしませんでした。一昨年に、夫婦滝に咲いていたものを望遠レンズで撮影し確認したところ、花柱(かちゅう、めしべ)の下半分に縮れ毛があることが分かり、トウゴクミツバツツジの可能性が高いことが分かっています。同じ特徴のミツバツツジが、お隣の高山市荘川町のあまご谷や六厩の軽岡でも見つかっています。一方、植物園のミズバショウ池のほとりに植えられているミツバツツジは、花柱に毛がないため、特徴から考えてユキグニミツバツツジとしていました。しかし、ユキグニミツバツツジには葉柄(ようへい)に毛がないことになっているのですが、園内のこのミツバツツジには、毛が生えており、この特徴は、トウゴクミツバツツジと同じです。これは、図鑑では分布域になっていないはずのダイセンミツバツツジの特徴と一致します。ダイセンミツバツツジは、鳥取県の大山から名をとられたツツジで、主な分布域は中国・四国地方で、長野県や山梨県(図鑑によっては愛知県)にも分布するとあり、分類上は、ユキグニミツバツツジはダイセンミツバツツジの亜種ということになっています。
昨年までユキグニミツバツツジの自生がひるがの付近で見つかっていなかったのと、葉柄の毛の色が図鑑にあるような褐色ではなく白色だったのでとりあえずユキグニミツバツツジということにしていました。そして、園内のミツバツツジはもしかしたら、ひるがの高原以外から移植してきたものだという可能性も捨てきれませんでした。これが、昨年までの状況です。ところが、今年になって、夫婦滝のトウゴクミツバツツジがほぼ終わりかけた頃に、そこから数百メートル離れた雑木林で、ユキグニミツバツツジと思われるおそらく自生のツツジが見つかりました。これは、図鑑どおりの特徴をもち、花柱にも葉柄にも毛がありませんでした。そういえば、何年か前に夫婦滝付近でも色が微妙に異なる2種のツツジが同時に咲いていたのを見たことがあるのを思い出しました。もしかすると、それは、トウゴクミツバツツジとユキグニミツバツツジだったのかもしれません。トウゴクミツバツツジとユキグニミツバツツジは近縁種で同じコバノミツバツツジ列という分類群に属していて、分布域が重なるところでは、両者の雑種に由来する中間的な種が出てくることも考えられます。
2013年5月30日 5:17 PM
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