管理者ブログ 2011年07月

エゴノキとエゴノネコアシフシ (2011年7月30日)

6月21日のブログ「エゴノキとハクウンボク」に書いたように、今年はエゴノキがたくさん咲いていました。そのエゴノキも今の時期は実がたくさんついています。若い実の皮は水につけると泡立つそうで、子どもの頃、祖父にこの実を昔石鹸代わりに使ったということを聞きました。この泡立ちの成分は、「サポニン」というのですが、トチノキの実にも含まれており、こちらの方も石鹸の代わりに使われたようです。「サポニン」は毒性があり、人間が食べるとのどや舌を刺激して「えぐい」らしく、これが「エゴノキ」の名前の由来になったということです。この実は9月頃になると熟して灰色の皮がやぶれ、中からチョコレート色の種子が出てきます。種子は、ヤマガラの大好物で、春先、前の年に落ちた種子をついばんで枝の上で両あしで上手にはさんでくちばしで割って食べている姿をよく見ます。
また、エゴノキの枝には、面白い形をした虫こぶがつきます。だれかがこれを猫の足に見立て、「エゴノネコアシフシ」という名前がついています。中にはアブラムシの仲間「エゴノネコアシアブラムシ」がいて、やがて先端から羽の生えた成虫が飛び出して行きます。

エゴノキの若い実

エゴノキの若い実

エゴノキの熟した実と種子 2009.10.13

エゴノキの熟した実と種子 2009.10.13

エゴノキの種子をついばむヤマガラ 2010.4.8 あやめ沢湿原

エゴノキの種子をついばむヤマガラ 2010.4.8 あやめ沢湿原

エゴノネコアシフシ

エゴノネコアシフシ

ゴマギとババシロアシマルハバチの幼虫? (2011年7月20日)

 ミズバショウ池のほとりには、ゴマギが植えてあります。ゴマギはガマズミの仲間ですが、同じくガマズミ属のヤブデマリやカンボクがひるがの高原では比較的多く見られるのに対して、ゴマギはまだ見たことがありません。植物園のものは、ひるがの高原からはちょうどひるがの高原スキー場の反対側にある板橋地区の谷沿いにあったものを移植したものです。移植したのは、1997年頃なので既に14年近くも経っていますが、その頃ひざの高さぐらいだったのが、いまだに小学生の背丈ほどで、上へはあまり伸びず枝を横へ横へと広げています。いつになったら花が咲くのかと思っていたら、昨年移植してから13年目にして始めて花をつけ、今年も花をつけていました。ヤブデマリ、カンボクがアジサイのような飾り花をつけるのに対し、ガマズミやミヤマガマズミと同じくゴマギには飾り花がつきません。ゴマギというのは、葉っぱを触るとゴマのような香りがするからついた名前です。花は6月中旬頃に咲きます。
 ところで、このゴマギの葉に白い綿が付いていました。実は昨年も見つけたのですが、その時は正体が分からずに、いつのまにか忘れていました。今年もついていたので、ちょっと気味が悪いと思いつつもよく観察してみると、イモムシの足のようなものや顔のようなものまでついています。それに、昨年も気づいてはいましたが、葉っぱにかじられたあとがあります。これは、もしかすると何かの幼虫なのではないかと思いました。そして、死んだ幼虫にカビみたいなものが生えているのかと思いました。インターネットで「イモムシ 白い綿」など検索してみた結果、蛾の仲間のアゲハモドキ、ハバチの仲間のミツクリハバチとババシロアシマルハバチの幼虫がこのような白い綿毛を纏うらしく、死んでカビが生えていたわけではないようです。この中で食草がガマズミ属のものは、ババシロアシマルハバチの幼虫のようです。この種が掲載されている図鑑が手元になくいまいち自信がないですが、インターネットの上の画像との比較では確かによく似ています。まさかハバチの仲間の幼虫だったとは大変驚きました。

ゴマギ

ゴマギ 2010.6.14

ゴマギ

ゴマギ 2010.6.12

ババシロアシマルハバチの幼虫?

ババシロアシマルハバチの幼虫?

梅雨が明けました。 (2011年7月9日)

東海地方で昨日、梅雨が明けました。それにあわせたのかどうか分かりませんが、昨日から、ひるがの高原で、ヒグラシの声を聞くようになりました。春から初夏にかけて渡ってきたオオジシギやカッコウの鳴き声もだんだんと聞かれなくなってきました。

スイレン、コウホネ、ヒツジグサ (2011年7月3日)

スイレン、コウホネ、ヒツジグサのうちで仲間はずれが一つあります。それは、どれでしょう。

園内には二つの人工の池があります。元々、ひるがの湿原植物園とその周辺には水路も池もありませんでした。水路は、開拓の際に湿地を乾かすために掘られた排水路と、高層湿原から乾燥が進みつつあった園内の湿原に水を引くために園内を整備した際に引かれた導水路でした。二つの池(「ミズバショウ池」と「スイレン池」)は、ミズバショウやカキツバタやスイレンなどを植えるために開園の際に掘られたのでした。今、浅い方の池「ミズバショウ池」には、ひるがの高原の他の湿原から移植されたミズバショウ、リュウキンカ、カキツバタなどの水生植物・湿原植物や、いつの間にか生えてきて増えているサワギキョウなどいろいろな植物があります。一方、深い方の「スイレン池」には、スイレンやコウホネが生えています。

二つの池にある水生植物の中でも、ヒツジグサとコウホネは、ひるがの高原では湿原植物園以外では野生状態のものはほとんど見ることが出来ません。特に、コウホネについては1箇所しかなかった自生地が数年前に埋め立てられ失われて以来、新しい自生地は見つかっていません。

さて、湿原植物園で夏の間、もっとも人目につき撮影者にも人気のあるスイレンですが、実は日本の野生種ではありません。日本には、広い意味では、スイレンの仲間の野生種はヒツジグサ1種類しかないのです。というわけで、最初の質問の答えは、スイレンのみが外来の園芸種というのが答えでした。

湿原植物園の現在の運営方針「ひるがの高原の自生植物の保護・保全を主な目的とする」から言えば、ハナショウブやスイレンなどの園芸種や、湿原植物以外のいわゆる「山野草」などは出来れば植えないほうが良いのですが、開園当初の名残として、今でもひるがの高原在来の湿原植物以外のものもいくつか植えられています。湿原植物園内の湿原には元々花が少ないこともあり、ある程度は止むを得ないと思います。それでも在来種の生存を脅かしては本末転倒です。というわけで、スイレン池では、スイレンが増えすぎて貴重なコウホネが少なくならないように、数年に一度は増えすぎたスイレンを除去しているのです。

スイレン池のスイレンとコウホネ

スイレン池のスイレンとコウホネ H20.7.1

ハイイヌツゲ (2011年7月2日)

ちょうど、今の時期は、ハイイヌツゲの花が咲く時期です。同じくモチノキ科のミヤマウメモドキも花をつけています。どちらの花も、とても小さくて目立ちませんが、独特の香りがするので、すぐに花が咲いていると気がつきます。そして、その花にはたくさんのミツバチもやってきます。そういえば、ひるがの高原周辺で採れた蜂蜜からは、ハイイヌツゲやミヤマウメモドキの花の香りがすることがあります。一つ一つの花は小さくても、数はとても多いので重要な蜜源となっているようです。

ハイイヌツゲは、地元では「やどみ」とよばれています。こまかい葉や枝が非常に多く、そこへ「矢」を討っても「止まる」ことから「矢止め」がなまって「やどみ」になったと地元の方が教えてくれました。元々、イヌツゲという植物があるのですが、これは、刈り込みに強いため、庭木としても植えられています。ひるがの高原のものは、冬に雪で地面に押し付けられるためなのか、地面を「這う」ように生えているので、「這いイヌツゲ」です。ハイイヌツゲを雪の少ないところに植えると、地面を這わずに大きくなるのかもしれません。ところで、ツゲという木もありますが、これは、「つげのくし」のように、細工物に使われます。ツゲもイヌツゲも常緑低木で小さな葉を枝にたくさんつけるので良く似ていますが、イヌツゲは材として有用ではないため、名前に「イヌ」がついています。

ハイイヌツゲは、植物園では他の植物を日陰にし、増えすぎるとワタスゲやキンコウカなどの湿原植物にとって良くないので、駆除の対象となっていますが、刈り過ぎても、地面に生えているミズゴケに日が当りすぎて枯れて乾燥してくるのでやっぱり湿原植物にとって良くないようです。また、湿原植物園の周囲には、ハイイヌツゲの低木林が広がっているのですが、ここはオオジシギの子育ての場所となっているようですし、雪解け後にも枝に残っている黒い実はあまりおいしくなさそうですが、この時期は他にえさが少ないのか鳥たちがついばんでいます。また、先に述べたようにミツバチにとっても必要な植物だといえます。なんでも私たち人間の都合で役に立たないから切ってしまえというのはどうかと思います。

ハイイヌツゲの雌花(雌株)

ハイイヌツゲの雌花(雌株) H21.6.25

ハイイヌツゲの雄花(雄株)

ハイイヌツゲの雄花(雄株) H21.6.26

ハイイヌツゲの若い実

ハイイヌツゲの若い実 H21.8.30

ハイイヌツゲの若い実

ハイイヌツゲの若い実

ハイイヌツゲの実

ハイイヌツゲの実 H21.9.10

ハイイヌツゲが広がる園内

ハイイヌツゲが広がる園内 H.23.4.10

ハイイヌツゲの花とセイヨウミツバチ

ハイイヌツゲの花とセイヨウミツバチ

ハイイヌツゲの実をついばむキレンジャク

ハイイヌツゲの実をついばむキレンジャク H21.3.28

クロイトトンボとキイトトンボ (2011年7月1日)

今年初めて、クロイトトンボとキイトトンボを撮影しました。撮影したのは、どちらも羽化して間もない個体のようでした。エゾイトトンボも見られます。

クロイトトンボの未成熟なオス

クロイトトンボの未成熟なオス

キイトトンボの未成熟なメス

キイトトンボの未成熟なメス

お問い合わせはこちらへ
岐阜県郡上市高鷲町/高鷲観光協会
TEL 0575-73-2241(開園中)0575-72-5000(冬 季)
開園時間:午前9時~午後4時半
開園期間:4月下旬~10月上旬(定休日無)※変更の場合あり