スイレン、コウホネ、ヒツジグサ (2011年7月3日)
スイレン、コウホネ、ヒツジグサのうちで仲間はずれが一つあります。それは、どれでしょう。
園内には二つの人工の池があります。元々、ひるがの湿原植物園とその周辺には水路も池もありませんでした。水路は、開拓の際に湿地を乾かすために掘られた排水路と、高層湿原から乾燥が進みつつあった園内の湿原に水を引くために園内を整備した際に引かれた導水路でした。二つの池(「ミズバショウ池」と「スイレン池」)は、ミズバショウやカキツバタやスイレンなどを植えるために開園の際に掘られたのでした。今、浅い方の池「ミズバショウ池」には、ひるがの高原の他の湿原から移植されたミズバショウ、リュウキンカ、カキツバタなどの水生植物・湿原植物や、いつの間にか生えてきて増えているサワギキョウなどいろいろな植物があります。一方、深い方の「スイレン池」には、スイレンやコウホネが生えています。
二つの池にある水生植物の中でも、ヒツジグサとコウホネは、ひるがの高原では湿原植物園以外では野生状態のものはほとんど見ることが出来ません。特に、コウホネについては1箇所しかなかった自生地が数年前に埋め立てられ失われて以来、新しい自生地は見つかっていません。
さて、湿原植物園で夏の間、もっとも人目につき撮影者にも人気のあるスイレンですが、実は日本の野生種ではありません。日本には、広い意味では、スイレンの仲間の野生種はヒツジグサ1種類しかないのです。というわけで、最初の質問の答えは、スイレンのみが外来の園芸種というのが答えでした。
湿原植物園の現在の運営方針「ひるがの高原の自生植物の保護・保全を主な目的とする」から言えば、ハナショウブやスイレンなどの園芸種や、湿原植物以外のいわゆる「山野草」などは出来れば植えないほうが良いのですが、開園当初の名残として、今でもひるがの高原在来の湿原植物以外のものもいくつか植えられています。湿原植物園内の湿原には元々花が少ないこともあり、ある程度は止むを得ないと思います。それでも在来種の生存を脅かしては本末転倒です。というわけで、スイレン池では、スイレンが増えすぎて貴重なコウホネが少なくならないように、数年に一度は増えすぎたスイレンを除去しているのです。
2011年7月3日 4:02 PM